勝とうと思う感情が、かえって現実の勝利のための詰めを甘くさせてしまう。
それを悟ることによって、もともと無心だった彼のテニスは、いっそう徹底した無心に戻った。
テニスは勝ちにも負けにもとらわれず、無心にやるべきなのだ。
たいていの球はなんとか打ち返し、長いラリーを続けていく。つまり、彼は、相手より
一回だけ多くラリーを続ければそのポイントが取れる、というテニスの簡単な原理をよ
く知り、ひたすらにそれに忠実になろうとした。
清水のテニスの限界「決め球がない」「勝味が遅い」
参考:やわらかなボール/上前淳一郎著/文芸春秋/1982